初の単著となります『ラカン 真理のパトス』が刊行されました(リンク先はamazon)。版元の人文書院のサイトで序文が読めます。
人はどのような経験をくぐって精神分析家となるのか?この問いをめぐって思索と実践に取り組んだ六〇年代のジャック・ラカンについての研究書です。日本では、思想家としてのラカン、臨床理論家としてのラカン、あるいは人生哲学者としてのラカンについては大いに紹介されてきましたが、他方でラカンの精神分析が「実践」として世の中に割り込もうと努めたその側面は、歴史的にも、それほどはっきりとは論じられてこなかったように思います。本書では、当時の精神医療史の文脈を再現した上で、彼の特異な実践の意義について、またラカンのその情熱が時代の思想家(特にアルチュセール、ドゥルーズ)との間に有するズレや共鳴について、明らかにすることを試みました。また、ラカンのストア主義やマゾヒズム論、四言説理論の歴史的評価、環世界論など、これまであまり論じられていなかった主題も扱っています。
刊行以来、なかなか街に出ることができず、ようやく先週末に街の本屋で実物が売られているのを見ることができました。年度末の忙しい最中、実際に買ってお読みいただいている方がいるであろうというのは、今のところ想像に委ねるほかなく、かといってそのなかなか追いつかないことですが、いつかどこかで感想をお聞かせいただければ幸いです。
私もまた執筆後の感想、とりわけ書けなかったこと、もっと書きたかったこと、挫折したことなど、いつかどこかで話せる日があればと。それでは。
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